2010年08月03日

ハーツ・アンド・マインズ 

ハーツ・アンド・マインズ 



どうも、Sagaです。再びベトナムな話です。

かなり古い話になりますが、7月のヴィクトリーショーの帰りにチームのメンバーで予定していた映画を観てきました。恵比寿ガーデンプレイスの美術館に併設されたシアターで上映されているベトナム戦争のドキュメンタリー映画『ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実』です。同時にベトナム帰還兵の告白を描いた『ウインター・ソルジャー』もやっていましたが両方は難しいので、『ハーツ・アンド・マインズ』だけ観ました。

この『ハーツ・アンド・マインズ』という映画は、1974年の米軍撤退後でありながらサイゴン陥落前という非常にデリケートな時期に作られたドキュメンタリームービーです。ベトナム戦争の実録フィルムと政府/軍参謀のインタビューを中心にした構成で「ベトナム戦争と何だったのか?」を訴えるものでした。

ハーツ・アンド・マインズ 
「戦争は怖いです。おうちに帰りたい」と言ってました。


確かにドキュメンタリーであるため史実が綴られてはいるが、この映画だけで、これが"戦争の真実"と結論付けるのはあまりに乱暴です。戦争や当時のアメリカの抱える問題など、ある程度の知識を持ってはじめてこの映画の内容が見えてきます。全体の作りはアメリカの戦時中の行為に対し、被害を受ける南ベトナムの人々の惨状を対比させた見せ方で"戦争の悲惨さ"をあからさまに見せつけてきます。

この映画にはベトナム戦争の大物役者が大挙して出てくるので、彼らがどんな人物かは予備知識として知っておかなければ彼らのインタビューが意味を持ちません。戦時下の大統領ジョン・F・ケネディ、リンドン・B・ジョンソン、リチャード・ニクソンの3人はもちろん、ペンタゴンペーパーズを執筆したひとりダニエル・エルズバーグ、ベトナム戦争の指揮を執ったウェストモーランド大将、赤狩りを推進したジョセフ・マッカーシー上院議員などなど・・・。そこでとある軍人から信じられない言葉が飛び出します。東洋人と西洋人の命の重さは違うらしいです。これは衝撃的でした! やや構成に作為的なものを感じずにはいられませんが・・・。

しかし、個人的に気になったのは、ロバート・マクナマラ国防長官の名が一度も出てこないこと。マクナマラはベトナム戦争において非常に重要なポストに立っており、ケネディ、ジョンソン両政権で戦争の決定権を行使することのできた人物です。ケネディとともに戦争をはじめ、泥沼化を招いたのもマクナマラの失策と言われてますが、戦時中現地視察に行く度、一向に好転しない戦局に対して、ついには強く軍縮を唱えたのも彼でした。すでに戦争は後戻りのできない状態に陥っていたもののタカ派の軍部に対して少しずつ異を唱えた数少ない人物だったのです。以前『マクナマラ回顧録』を読んだときには世間の見解と当時本人が思っていたこと、考えていたことには大きな隔たりがあったそうで誤解ばかりされていたようでした。(自伝書なので正当化した部分もあるでしょうが・・・)

もし、ウエストモーランドがマクナマラの声を真剣に聞き入れたなら・・・もし、ロバート・ケネディが生きていたなら・・・そんなことも考えてしまう暗い時代であり、この映画を観て改めて思ったことでした。自分はベトナム戦後の生まれですが。

この映画を観てある程度内容がくみ取れる人は、すでにインドシナ情勢の大筋を理解できている人だと思います。話はそれますが、たとえば、映画『イージー・ライダー』のラストシーンから当時の世相を理解できる人たちでなのでしょう。反戦、ヒッピー、共和党、ブルーカラー、リベラル派・・・当時の様々な要因を詰め込まれたラストシーンは衝撃的ですが興味深いエンディングでした。もしくは誰もが一度は観たことのある映画「フォレストガンプ 一期一会」で全てのネタに笑えるアメリカンな人でしょうか。


ハーツ・アンド・マインズはドミノ理論による政治家たちの思惑から戦争に踏み入ったプロローグから語られています。ところが、表層の悲惨な映像以外から制作者の意図が伝わる人には"物足りなさ"を感じさせ、はじめてベトナム戦争に触れた人には"難解すぎる"という中途半端感がありました。1974年当時の公開だったからこその作品であることを念頭におかなければなりません。
冷戦のまっただ中にあった'60-'70年代は、戦争だけでなく、宇宙開発競争、公民権運動、続く指導者たちの暗殺、めまぐるしい変動の時代だったわけで、敗北感が蔓延するアメリカに直球でこの映画をつきつけた意味は確かに大きかったと思います。しかし、戦後35年経った今、ベトナム戦争を風化させない意味でも日本で上映できたことは喜ばしいことですが、これは観る側の人間も試される映画です。感想はなんでもいいと思いますが「悲惨だったんだね」「かわいそう」よりもう一歩先に進めればこの映画の意味はさらに大きくなると思います。ただ、現在の上映に際し、イラク/アフガンを用いたキャッチコピーにはいささか違和感を感じました。


映画『ハーツ・アンド・マインズ』&『ウィンター・ソルジャー』予告編

若干衝撃的な映像が含まれますのでご留意願います。


なにかと非難の大きいベトナム戦争ですが、印象深いワンシーンにこんなのがありました。
「ベトナム戦争を無意味だったと言わないで欲しい。息子は価値あるもののために死んでいったと思いたい」といったニュアンスで話した兵士の父親のインタビューです。規模は違えど双方が被害者であると印象付ける言葉でした。戦争は地獄です。

かくいう自分も独学である程度学んだだけですので当事者でもなんでもないので偉そうに言えませんが。


と、いろいろ思うところがあった映画だし、そう再考させるだけでも観た意味はあったでしょう。あ、これは、勝手な誤解をしているかもしれない個人的な感想です。かなり偏っているかも知れませんし間違っているかもしれません。こんな思慮を持ちながらまた来週には緑色のユニフォームに袖を通すわけなんです。
フィクションなら装備がどうのとか演出がなんて言えますけど、事実はただ受け止めるしかありません。こういった趣味を持っている我々ならもっと戦争を大局的に理解して「戦争イクナイ」以外の言葉で表現できたらいいなと思います。
日本でも終戦の日が近いので、今一度戦争の意味と現実を考えてみてはいかがでしょうか。なんか重くてすいません。

ハーツ・アンド・マインズ 

ということで上映延長らしいので、観たい人は下高井戸シネマと東京都写真美術館ホールへどうぞ。スケジュールは公式サイトをチェックしてください。

『ウインター・ソルジャー』を観た方がいれば感想をいただきたいものです。

来週は大越南祭です・・・。
ちょっと複雑な気持ちになっちゃいますが、楽しんできますよ。
ではノシ







同じカテゴリー()の記事画像
ハートロック2.0の準備と訪問販売
VISIONのポスター
12月のミリ系活動報告
Call of Duty:BLACK OPSとJFK
MoH M14EBR×ACOG
ハート・ロッカー DVD/BD発売! そして・・・
同じカテゴリー()の記事
 ハートロック2.0の準備と訪問販売 (2012-04-21 17:33)
 VISIONのポスター (2011-01-27 23:46)
 12月のミリ系活動報告 (2010-12-28 10:41)
 Call of Duty:BLACK OPSとJFK (2010-11-22 13:26)
 MoH M14EBR×ACOG (2010-10-22 17:55)
 ハート・ロッカー DVD/BD発売! そして・・・ (2010-09-02 12:24)

Posted by Saga  at 00:03 │Comments(0)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。